ゴミ屋敷を覆うコバエの群れを前にして、多くの人は殺虫スプレーを手に取ります。しかし、それは一時的に飛んでいる成虫を駆除するだけで、根本的な解決にはなりません。コバエ問題を解決するための鉄則は、まず「発生源を特定し、除去する」ことです。コバエは必ず、腐敗した有機物がある場所で産卵し、繁殖します。発生源として最も可能性が高いのは、キッチン周りです。長期間放置された生ゴミ、食べ残しの入った弁当容器、飲み残しのジュースやアルコールの缶・ペットボトル、汚れたままの排水口などが主な候補地です。また、リビングに放置された果物の皮や、観葉植物の受け皿に溜まった腐った水なども見落としがちなポイントです。ゴミの山の中からこれらの発生源を探し出し、完全に密閉して廃棄することが最初のステップとなります。発生源を撤去した後は、その場所を徹底的に清掃・消毒し、卵や幼虫が残らないようにします。全ての発生源を取り除いて初めて、空間に飛んでいる成虫をトラップや殺虫剤で駆除する作業が意味を持ちます。しかし、ゴミ屋敷レベルになると、発生源が一つではなく、ゴミの山全体に点在していることがほとんどです。自力での完全な除去は極めて困難であり、安全かつ確実な解決のためには、専門の清掃業者に依頼することが最善の選択と言えるでしょう。私の平和な日常は、ある夏の日、一匹のコバエから崩れ始めました。最初は気にしていませんでしたが、日に日にその数は増え、キッチンに置いた果物には黒い点が群がるようになりました。いくら自分の家を清潔にしても、コバエは減るどころか増える一方。そして、ある時気づいたのです。コバエは、お隣の家の開いた窓から、まるで煙のように流れ出ていることを。お隣は高齢の男性が一人で暮らす家で、庭には雑草が生い茂り、窓にはいつもカーテンが引かれていました。直接文句を言いに行く勇気もなく、かといってこのまま我慢し続けるのも限界でした。悩んだ末、私は意を決して市役所の環境課に相談の電話を入れました。事情を説明すると、担当者は親身に話を聞いてくれ、個人情報に配慮しながら、まずは行政として状況の確認と指導を行ってくれることになりました。すぐに解決する問題ではないかもしれませんが、一人で抱え込まず、公的な機関に相談するという一歩を踏み出せたことで、少しだけ光が見えた気がしました。
ゴミ屋敷のコバエ退治はまず発生源の特定から