近年、ゴミ屋敷に関する相談が増えています。その多くは近隣住民からの苦情ですが、中には住人ご本人やそのご家族から「差し押さえの通知が来たが、どうすればいいか」という切羽詰まったご相談もあります。本日は法律の専門家である弁護士の鈴木先生に、ゴミ屋敷と差し押さえの問題についてお話を伺います。「ゴミ屋敷が法的に問題となるケースは主に三つあり、そのいずれもが最終的に差し押さえに繋がる危険性をはらんでいます」と鈴木先生は語ります。「第一に、固定資産税や住民税などの税金の滞納です。これは最も直接的な差し押さえの原因となります。国や自治体は、税金の滞納者に対して、裁判所の判決などを必要とせずに、法律に基づいて直接財産を差し押さえる強い権限を持っています。これを『自力執行権』と呼びます。督促を無視し続ければ、不動産は確実に差し押さえられ、公売にかけられてしまいます。第二に、マンションの管理費や修繕積立金の滞納です。分譲マンションの場合、管理組合が滞納者に対して訴訟を起こし、勝訴判決を得た上で、その部屋を競売にかけることができます。これが認められれば、部屋は強制的に売却され、所有権を失います。第三のケースが、近隣住民とのトラブルです。悪臭や害虫の発生、景観の悪化などが原因で、周辺住民の生活環境が著しく害されている場合、住民は損害賠償やゴミの撤去を求めて訴訟を起こすことができます。この裁判で負け、賠償金や撤去費用を支払えない場合、その人の財産、つまり家が差し押さえの対象となるのです。さらに最近では、『空家等対策の推進に関する特別措置法』に基づき、行政がゴミの強制撤去(行政代執行)を行うケースも増えています。その費用は所有者に請求されますが、支払いがなければ、やはり財産差し押さえへと進んでいきます。差し押さえは、ある日突然行われるわけではありません。必ず督促や勧告といった前段階があります。そのサインを見逃さず、できるだけ早い段階で我々のような専門家や行政の窓口に相談することが、最悪の事態を回避するための唯一の道と言えるでしょう」。
弁護士が語るゴミ屋敷と差し押さえの法的リスク